片岡義男の小説には、ときどき印象的なステイショナリーの表現が出てくる。
それは、素敵な女性が使う万年筆とそのインクの色に関する表現だったり、あるいは出来る男がふとした瞬間にメモをとる紙について何行も解説するシーンだったりする。
そんな彼ならではの文具本として、「文房具を買いに」と「なにを買ったの?文房具。」があり、その「文房具を買いに」の中の一節に、以下のような文章が出てくる。
「アメリカには鉛筆をいつも持っている人が多い。ブルーカラー的な人に多いけれど、けっしてそのような人たちだけではない。
(中略)
鉛筆の軸に取りつけるクリップというものを、ぜひ見ていただきたい。日本にはない、と断言していい。」
なるほど。
ファッションのジャンルで、アメリカは日本において確実にその地位を確立していると言えるだろう。
しかし、ステイショナリーの分野ではアメリカの地位はそれほど高くはない。
確かに、crossや
Ostrichといったブランドもあるが、全体としてはいまひとつといった感じである。
それは使ってみればわかる。
彼の地の紙質は、日本のそれと比べるとおそろしくザラつく感じが否めない。
鉛筆の芯の質感や各種ホルダーのチリの合わせ方といったものも、日本やヨーロッパのそれらとは格段の差があると言わざるを得ない商品が多い。
しかし、そんな製品だからこその質感が本当は堪らないのである。
Dixon の黄色い鉛筆にPaper Mateのボールペン、Ampadのリーガルパッド。
SaundersのMetal Clip BoardやPlastic Caseなど。
そしてBostonやApscoの鉛筆削り。
どれをとっても荒っぽいのだけれど、それらが置かれた瞬間に、堅苦しかったデスク上がムチャクチャ陽気な雰囲気になると思うのは気のせいだろうか。
そう、ちなみに片岡氏が絶対にないと言う鉛筆用のクリップはもちろん当店にはある。
これを付けると、Dixon の黄色い鉛筆がどこかオシャレに見えるから不思議だ。ヒッコリーストライプのオーバーオールの胸ポケットなんかにさしたら、これほどサマになる組み合わせはないだろう。SaundersのMetal Holderなんかを小脇に抱えて。
アメカジ好きの方には、是非、アメリカ文具にも目を向けていただきたいものである。
そういえば、アメリカのGasStationなどに、むかしはボールペンの自動販売機があったのをご存知だろうか?
つい先日、ふとしたキッカケでそれも入手したので、そのうちお店に持って行こうと思う。
ヨーロッパや日本のステイショナリでは感じられない、アメリカならではの文具の良さを、是非、皆さんにも知っていただきたいものである。
【2012/02/16 トチギマーケット 】